「因と縁」の法則
私たちは、強い思い込みを持っています。
それは、直接的な外力(条件)によって、内因(主体)をより良く(発展方向に)変えることができるというものです。
でも、実際は、それは不可能なのです。
たとえば、野菜の種を植えるとします。
そして、水分や温度などの条件を整えてあげます。
しばらくすると、芽が出てきます。
この種の中にある「いのち」のはたらきが内因(因)です。
そして、水分や温度などの条件が外因(縁)です。
私たち(外因)が、野菜(内因)に対して、してあげられるのは、適度な条件を整えてあげるということだけです。
もう少し詳しく整理すると...
外因によって、内因を創り出すことはできません。
外因によって、内因の力を高めることもできません。
外因が作用できるのは、内因のはたらきを介してだけです。
外因の作用に対して、内因には内部応力が発生し、その一部が残留します。
外因による作用の効果は、局部的・一時的です。
(全体・時相でみると混乱を招きます)
作用の効果に比例して、弊害(副作用)も大きくなります。
外因の作用が効果を現す場合は、内因が持つ本来の機能は低下します。
たとえば、ステロイドや抗うつ剤を考えてみれば分かりやすいと思います。
ホルモンなど、体内で作られる物質を外から補うような場合は効果も高いです。
その変わり、本来の機能(身体の機能)は低下することになります。
外から与えられることで、体内で作る必要が無くなるわけです。
そして、効果が高い分、副作用も強くなります。
逆に、不足させることで、機能を高めることができます。
たとえば、菜食などで、蛋白質を摂らずにいると、腸内でのアミノ酸を生成する機能が高まります。
腸内の窒素固定菌が増えて、腸内でアミノ酸を生成してくれるのです。
土壌では、窒素肥料を考えてみれば分かりやすいと思います。
植物は、土壌の共生細菌から必要な栄養素をもらい、逆に、その菌たちに必要な栄養素を与えています。
でも、外から肥料が施されると、植物は、根の張りが悪くなります。
そして、こうした共生関係は壊れてしまいます。
逆に、肥料分が少ない土壌では、根の張りが良くなり(毛細根が増え)、微生物との共生関係が築かれていきます。
形式論理では、プラス(与える)することで増えます。
でも、事実は、逆だということです。
このように、物事を発展方向に導く原動力は内因にあります。
(内因が支配的で、外因は条件にしかすぎません)
ところが、衰退方向へは、外因の力は、支配的にはたらきます。
つまり、外因によって、内因を破壊することは容易だということです。
たとえば、たっぷりの栄養を与えようと、多めに肥料を撒くとします。
すると、野菜は、根腐れして枯れてしまいます。
手助けのつもりでも、内因が受容できる範囲を超えてしまったら破壊です。
内因をねじ伏せ、成長の芽を摘むということは、日常的に行われています。
それは、良いつもりで行っていることなので、なかなか正せません。
また、この「因と縁」(内因と外因)の法則は、上記の例のようなものにとどまりません。
個人や家庭・学校・地域・国など、あらゆる系に共通する普遍的な法則です。