種を守るには(菜園コミュニティを広げよう)

食(種)を守っていくには

 では、どうやって、食を守っていけば良いのかです。
 こうした中では、地域で守っていくしかないわけです。
 その基準になる考え方が、「地産地消」であり「適地適作」です。
 つまり、必要なものは自分たちで作っていこう。
 そして、自分たちで消費していこうというものです。
 まずは、何よりも大事な自立を目指そうということです。
 でも、それだけでは、自分たちさえ飢えなければ良いということになってしまいます。
 また、自分たちだけで、全てをまかなうわけにもいきません。

 そこで、「適地適作」です。
 各地域で、その地域に適したものを、適切な方法で作っていこうということになります。
 それによって、生産コストや環境への負荷も大幅に軽減できます。
 そして、多めに作って、みんなで分け合っていけば良いということになります。
 つまり、各々の特色を活かし、支え合っていこうという考え方です。
 そのためには、各々が自立できなければなりません。
 そして、良いところを見つけ、それを伸ばしていくことが必要です。
 こうしたことができるのはローカル経済の強みです。
 そこから、市場原理から離れた新たな価値も創出されることになります。

 それによって、ビジネス形態も大きく変わってきます。
 大量生産から高付加価値化への転換が可能になるということです。
 そして、提案型ビジネスへの移行です。
 それによって、新たな価値が生まれ、市場の創造もなされていくことになります。
 地域の食文化を復活(創造)し、食の世界を盛り上げていくことも可能です。
 また、ネット社会との連携も相まって、それが広がりを見せていきます。
 それが、都市と農村との架け橋となっていきます。

種から「地産地消」

 これからは、効率化優先の農業では輸入作物に駆逐されてしまいます。
 そればかりか、地球規模の食糧危機に陥り、海外の作物も入ってこなくなります。
 また、環境に負荷をかけ続けると、そのうち魚介類も食べられなくなります。

 いちはやく、持続可能な農業へ転換していかなければなりません。
 その際のカギを握るのが種です。
 今では、種の9割以上が海外で採種されています。
 そして、最も深刻なのは、多くの原種が失われつつあるということです。
 国内の採種農家は、高齢化に伴い壊滅寸前です。
 食糧危機回避のためには、いかに良い種を育成し確保できるかです。
 良い種とは、「無施肥で育つ省エネ型の強い種」です。
 そんな種なら、根の張りが良く、少々の異常気象にも対応できます。
 肥料を施す必要がありませんから、病虫害も防ぐことができます。
 そのため、無農薬での栽培が可能になります。
 また、肥料資源が枯渇したとしても、何ら影響ありません。
 そして、何より作物の品質が向上します。

 種の育成とはいっても、決して特別なことではありません。
 種に内在する力を、自家採種によって引き出すというだけです。
 生育の良かった株から種を採って、翌年にその種を蒔いて...の繰り返しです。
 それで、その土地に合った作物へと進化していくのです。
 つまり、自家採種によって、真の適地適作が実現することになります。
 同時に、真の地産地消もです。
 そもそも、肝心の種が海外産では地産にはなりません。
 そして、生産者の真の主体性の確立が可能になるということです。

 こうした中で、価値を持ってくるのが中山間地域です。
 中山間地域は、高品質の作物を栽培するのにうってつけです。
 昼夜の温度落差のあるところでは、高糖度の良い作物ができます。
 周辺の農地からの農薬の飛散、土壌や水の汚染がありません。
 地下水に肥料分(窒素分)が流入しません。
 交雑が起こりにくいため自家採種ができます。など...
 日本には、このような中山間地域という広大な資源が眠っています。
 その資源をフルに活かしていけるかどうかが日本の命運を決めます。
 そのチャンスは今しかありません。
 農地が原野化してしまってからでは、もう手遅れです。
 日本が掲げるべき農業戦略は...
 「中山間地域を食料基地とすべく持続可能な適地適作農業を推進するを要す」ということになるのではと思います。

自給菜園で食(種)を守る

 これからは、自らで、食を守っていくという観点も必要になってきます。
 つまり、個人(家庭菜園)レベルやコミュニティで、食を守っていくということです。
 今では、家庭菜園の野菜を、直売所に出荷するというようなことも行われています。

 その背景にあるのが、食(種)の覇権争いです。
 これから、ますます、激化していくことになります。
 種を独占できれば、食の主導権を握り、世界を牛耳ることができます。
 この経済至上主義の社会では、お金がお金を生んでいきます。
 そして、お金が集まれば、政治力も手中に収めることができます。
 食の根本を握れば、世界も支配できるということです。
 「種を制するものが世界を制す」と言われているゆえんです。
 日本でも種子法が廃止されました。
 これからの日本の食も、どう変わっていくのか?です。

 こうしたことに対する危機感は、今、世界中に広がっています。
 そして、食(種)を守ろうとする活動も世界中で巻き起こっています。
 守るべきものは自らで守っていこうという時代に変わってきたのです。

 つまり、自給菜園であれば、確実に安全で安心な食を確保できるということです。
 そして、取りたての新鮮なものを食べることができます。
 それだけではありません。
 菜園は、楽しみの場、癒やしの場、学びの場であったりもします。
 地域住民の交流の場にもなります。
 都市と農村との架け橋にもなります。
 そして、コミュニティーの形成にも一役買うことにもなります。

 こうした自給菜園では、なにも、大量生産を目指しているわけではありません。
 作物の生育速度や収穫時期を均一にする必要もありません。
 (逆に、一斉に実ったら食べきれません)
 そして、箱詰めや輸送のための規格野菜である必要もありません。
 そのため、固定種というタイプの種(いわば原種)を使用できます。
 あえて、雄性不念F1種を使う必要もないわけです。

 自給菜園では、高品質で健康的な野菜を、持続的に栽培することが目的です。
 そのために必要なのが、土壌の健全化(清浄化・安定化)です。
 土壌は、野菜にとって、私たちの腸と一緒です。(野菜の体の一部です)
 その健全化のための方法が、無施肥であり不耕起(浅耕)です。
 それにより、根の張りが良くなり、菌類との共生関係も築かれます。
 健全な土壌では、生態系のバランスが取れます。
 そのため、連作障害も起こりません。
 虫害に遭ったり、病気になったりもしません。

 自らで種を守っていくと言っても、難しいものではありません。
 日が当たる雑草が生えているようなところであれば、野菜は育ちます。
 庭に、空きスペースがあれば、種を蒔いてみてください。
 耕作放棄地があれば、仲間を募ってコミュニティ菜園も作れます。

 はじめて、種を蒔くと、最初の年は育ちが良くないのが普通です。
 そんな中にも、育ちが良い株が現れます。
 種を採るのは、そんな株からです。
 そして、翌年に、その種を蒔きます。
 その繰り返しで、だんだん、その土地になじんできます。
 そして、旺盛に育つようになってきます。

 また、人それぞれに、野菜の味や形の好みというのがあります。
 そういった自分の好みのものを選抜して種を採っていけば良いわけです。
 それによって、自分のオリジナル野菜に変わっていきます。
 これは、何も特殊なことではありません。
 一昔前までは、ごく当たり前に行われてきたことです。
 人類は、そうやって、長い歴史を種と共に生き抜いてきました。

 固定種を育てる醍醐味は、このように種を育てていくところにあります。
 こうして、育てた種は、とてもとても貴重です。
 そんな種が、いざという時に、人類を救うことになるのかもしれません。